
(写真をクリックすると拡大します/シグマ、DP2 Merrill)
残暑の厳しい土曜の午後おそく、友人Jと田浦散策へ。北口(港側)を出ると、閑散としている。戦前から残っている倉庫群は、だいぶ建て替えられてしまった。かつての国電田浦駅から港へ通じる、引き込み線の線路は、かろうじてまだ一部が残っている。土曜のせいか、閑散としているが、よくよく考えてみると、平日でも閑散としている。
北口の階段と隣接するように建っている酒処「夜城」は、たしか一昨年に閉店してしまったが、おばさんが、玄関前で掃き掃除をしていた。一度だけ飲みに行ったことがあるが、店の一角は防空壕とつながっていて、そこにトイレがある。本当の昭和の趣があり、自分の子ども時代にタイムスリップしてしまった。
10歳のとき、風呂は木製で、窯に新聞紙をねじって置き、その上に薪をならべ、さらにその上に石炭を乗せて、火をつけたものだ。冷蔵庫も木製で、夏の朝、氷り売りが来ると、一貫目、とか二貫目の氷を買い、上部の氷り室に入れると、下の室が冷える、といった構造だった。
それから、たかが半世紀ほどでアップル社からiWatchなるものが発売されるなど、つまり、当時の僕からみれば、なにもかもがSFの世界のようになるなど想像できただろうか。でも、こうした未来の科学技術は、いま僕らを、どれほど豊かに、幸福に、安らかにしてくれているのか、僕にはよくわからない。
かつての軍港、田浦の閑散とした町を歩きながら、そんなことをふと思った。