[photo :大神島の遠見台から]
●2006年2月2日(水)6日目 宮古島/大神島/石垣島
旅の疲れが出はじめ、朝起きるのがツライ。
キッチンでボ〜っとしていると、
スタッフのAMさんがウコン茶を煎れてくれた。
初めての味に、一口で目が覚める。
まさに目からウコン(いや、ウロコ)
ウコンは肝機能を強化するので、
二日酔いにもうってつけだ。
ちなみに、宮古では、ウコン入りの清涼飲料水
「うっちん茶」をどこでも見かける。
島尻から船で大神島へ。
大神島は平良市島尻港の沖4キロに位置する、
周囲2.75km、島民37人の小さな島。
宮古の人々にとって神聖なこの島は、
ふつうに観光するのはかまわないが、
島内での軽率、非常識な行動は慎むべし。
高台に位置する神の岩に登るのはもってのほか、
秘祭「祖神祭」(ウヤガン)は、島外の人には見ることも許されない。
船を降りると、神にまつわる逸話を聞いていたせいもあり、
身が引き締まる。
しかし、道すがら島民の方とすれ違うと、
みんな「こんにちは」と気さくに声をかけてくれる。
おじい、おばあの微笑みは暖かく、なんだかホっとする。
都会にいると、こんな素朴で当たり前のことすら忘れがちになるものだ。
遠見台からの眺望は360度。
台のすぐ脇には神の岩があり、島を見守っている。
神のすぐ横で、宮古の海原を見下ろす。
僕個人としては、神を否定もしないし、肯定もしない。
ただ、この時ばかりは心のなかが、言葉では表現できないほど優しく、
白波一つ立たない大洋のように落ち着き、
そこからずっと動くことができなかった。
やがて、乗るべき帰りの船が、ゆっくりと大神港へ向かってくるのが見える。
後ろ髪を惹かれる思いで遠見台を、そして大神島をあとにし、
宮古での最後の目的地、東平安名崎へ。

[photo: 東平安名崎の海]
東平安名崎で昼食。クルマを降り、灯台に向かって歩いていると、
観光客用の人力車を引く、足袋を履いたニィちゃんと目が合った。
「ここで食べる弁当はウマイよ!」
江戸っ子のように威勢がいい。
たしかにその通り、コンビニ弁当の味がいつもと違う。
都会では心の中に(意図的に)隠されてしまう感性が、
自然の恩恵によって露出、刺激され、高みに導かれているからなのだろう。
ふと、愛読しているブログの、筆者の言葉が頭をよぎった。
* * *
この、たとえようもない美しい風景は、
いったい、なになのだろう?
1年、365日、僕らは一人一人、
暮らしの場所というところに住んでいる。
必然か、偶然かはともかく、
とにかく、ある場所で暮らしている。
そこでは緊張感を喪失し、
見つめることへの意欲を失っている。
その場所は、どんなところなのだろう。
自分が、目覚め、そこで採れたものを食べ、
陽を拝み、風を感じ、全身でそれを受け止めている場所なのだろうか。
旅が日常を相対化してくれるのは、
日常のなかで沈殿していく意識のかさぶたを
ある種の根源的な風景が洗い流してくれるからだろう。
ふと、そんなことを思う。
旅の感傷だろうか。
もちろん感傷も、旅のひとつの特権だ。
* * *
宿に戻ると、今日も静かで優しい風が吹き抜けている。
荷物をまとめ、15分ほどウトウトしていただろうか、
気がつくと空は雲ひとつない快晴。
まったく、出発寸前に晴れるなんて。
とボヤきたくなるが、宮古が「また来いよ」と
呼んでくれているものとしよう。
ひららやの方々と再会を約束し、石垣へ向かう。
石垣空港に着く頃、島は夕暮れに紅く染まろうとしていた。

[photo: 石垣港に沈む夕日]







