2006年10月08日

書籍のご案内 ★ 『キリエの誕生』



   なにをやっても、うまくいかない十九歳の希里絵。
   転げ落ちるように人生の泥沼に沈んでいく。
   彼女を待ち受ける過酷な宿命とは何か。
   彼女に手をさしのべる奇妙な人たちの秘密とは何か。
   若き女性の再生と誕生を描いたシリーズ第1作。
   人類の未来を託された人々が今、動き出す。

        著者: 和田文夫
        初版: 2003年11月6日
        体裁: B6判、256頁、ソフトカバー
        定価: 本体1,200円+税
        発行: ガイア・オペレーションズ
        発売: 英治出版

★本文紹介(冒頭のエピローグより)★

ゆるやかな右カーブを抜けると、眼下に日本海が姿をあらわした。
V字谷の中ほどまで海がせりあがり、その底に町が広がっている。
定規で引いたような一直線の国道を滑るように下っていく。
さっきまで、狭くて曲がりくねった道を走ってきたのが嘘のようだ。
1200cc、並列四気筒のエンジンがうなり、からだを振るわす。
自分がオートバイに乗って故郷に向かっているなんて……。
ビデオの早戻しのように、2年の歳月を思い返す。
義父は元気にしているだろうか。
次郎は幸江と結婚したのだろうか。
小川さんは、佐知子と暮らしているのかな。
あらためて考えてみると、自分の人生とは思えない。
まるで他人の人生を空から眺めているようだ。
これは運命だったのだろうか。
ちがう。
人は、自分を何かにゆだねることなど絶対にできない。
人は、人を救ったり癒したりはできない。
自分で自分を変えていくしかないのだ。
私は、たくさんの人たちの力をもらって生まれ変わった。
世界はきっとやさしさに満ちあふれている。
ただ、それに気づいていないだけなのだ。
キリエ、あなたはよく生き抜いてきた。
これからも、自分をもっと汲み尽くしていくのよ。
それがほかの人たちに勇気と微笑みを伝播していく。
私は静かに微笑んだ。
未来はここにあり、過去もここにあり、今という瞬間を私はすべて引き受ける。
(c)Fumio Wada


posted by サンシロウ at 07:16| Comment(0) | TrackBack(0) | ■書籍のご案内
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