2010年03月24日

読書日記(013)2010年3月24日

『ブルーノ・ムナーリの本たち MUNARI I LIBRI 1929-1999』




   著者 ジョルジュ・マッフェイ
   翻訳 瀧下哉代
   発行 2010年2月28日
      ビー・エヌ・エヌ新社
   定価 本体4,800円+税


本を手にとったとき、ずっしりとした重さに驚く。
計ってみたら、1.2キログラムあった。
装幀は、白地に文字だけのシンプルなデザイン。

カバーはなく、ボールの表紙に、袋袖付きのビニールがかかっている。
なんとも、新鮮で、好感あふれるデザインだ。しばらくそのたたずまい
を眺めながら、これはいい本にちがいない、という期待で胸が高鳴る。

本文では、1929年から1990年まで、年代順にムナーリの本が紹介されて
いる。ページを手早く繰っていきながら、ムナーリがつくった本(作品)
を眺めていく。

素敵な本である。
単に、古き良き香りというだけでなく、手触りとしての郷愁、工芸品と
しての完成度、芸術としての斬新な試みなど、いわば本と創造に対する
愛情があふれている。

久しぶりに、ふくよかな香りの本に出会い、幸福なひとときを送ること
ができた。そして、不意に、最近、話題になっている電子ブックのこと
が思い浮かんだ。

デジタルテクノロージーが進化し、本はデジタルデータとして保存され
ようとしている。もちろん、それに対して批判するつもりはない。私自
身、もう十数年も前から、Macと専用ソフトによるDTP、すなわちコン
ピュータによる組版によって出版の仕事をしてきたからだ。

そんななかで、「ムナーリのつくった本」の本を眺めながら、デジタル
は創造の世界を豊かにしてきたのだろうか、という疑問が口をついてで
る。もちろん、自分自身に対して。

本のデザイン、すなわち、カバーデザインという狭義のデザインではな
く、判型、レイアウト、紙材、製本様式、からくり加工など、造本全体
に気を配る意識が自分にどれほどあっただろうか、と。

そう思うと、インターネットや専用端末や携帯で「読める」電子ブック
への疑問もわいていくる。

たしかに、環境保護的観点からいえば、このまま木材=紙を大量に消費
していく現在の紙本のあり方がよいとはいえないだろう。電子ブックな
ら、在庫がいらなくなるし、返品も品切れもない。すぐに購入できるし、
本文の検索も可能、カラー画像もいくらでも収録できる。

しかし、本は、単なる情報のアーカイブとして保管・管理されるだけで
いいのだろうか、という「古い人間」としての執着がまだ僕のなかにあ
る。陽に焼け、酸化して茶色に変色した本が見せる、まるで長い人生を
生き抜いてきた年輪のようなもの。そこに、創造物としての魂が息をひ
そめているのを感じるのは、単なる錯覚なのだろうか。

さて。
恥ずかしながら、ブルーノ・ムナーリというデザイナーの名前を知った
のは初めてである。オンラインで購読しているリブロ発行の「BOOK Door
to Door vol.247」の特集で知ったのだ。これもまた、デジタルのなせる
技だ。

なお、著者のジョルジュ・マッフェイは、美術史家で、本とアートとの
関係を研究しているという。ムナーリの作品のコレクターとして有名で、
ムナーリに関する評論集など多数、編纂している。

ムナーリについては、また改めて、考えてみたい。
posted by サンシロウ at 04:02| Comment(0) | TrackBack(0) | ★読書日記
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