2007年に宮古島の写真集『孤島の発見』を出版して以来
7年ぶりに本を書いた。
と言いつつ、いったい7年のあいだ何をやっていたのか、
と憮然としたこともたしかだ。
本のタイトルは、『たのしい編集』。
編集、DTP(組版)、校正、装幀など「本づくり」の工程について、
僕の、つたない経験をまとめたものである。
また、本の仕事に携わるプロフェッショナルの方々に
インタビューした記事も収録している。
『ダヴィンチ・コード』を訳された翻訳家の越前敏弥さん、
長年、装幀デザインを手がけてきた、デザイナーの大森裕二さん、
大手印刷会社で出版印刷を担当してきた尼ヶ崎和彦さん、
彼らのプロフェッショナルとしての経験と技術には
ただただ教えられるばかりで、自分の無知を思い知らされた。
今年、僕は年男で、還暦を迎える。
昭和30年代のころ、小学生だった僕には、
60歳の人は、おじいさん、おばあさんに見えた。
自分が、おじいさんになるとは、夢にも思っていなかった。
とはいえ、60歳の自分の頭のなかは、まだ高校生みたいで、
幼稚このうえないように見える。
どうしたものか。
それはともかく、還暦の年に、これまで携わってきた本の仕事について、
まとめることができたのは、ありがたいことだな、と思う。
何かをまとめるのは、次の場所へ向かうための準備だ、といえなくもない。
本をつくっていていつも思うのは、人間というのは、
生きるだけでは満足できない動物なんだなと。
生きることの「意味」をつねに問うてしまうのが人間の哀しさであり、
喜びであり、性(さが)であり業なのかな、と思ったりもする。
本の好きな人には、ぜひ読んでほしいと願っている。
(和田文夫)