今回、著者である仲本さんの許可をいただいたので、
『メルカトル・パノラマ』の本に収録されなかった作品を紹介してみたい。
いわゆるボツ原稿だ。
とはいえ、作品の質が低いからボツになったわけでは、もちろん、ない。
今回、アートディレクションをお願いしたフエゴの佐々木さんの「思惑」に
合致しなかっただけの話だ。
私も、自分の写真集『
孤島の発見』を編集したときに身に染みたが
1冊の本をつくるということは、多くのものを集約することではなく、
たくさんの素材を削り取る作業にほかならない。
あれもこれも、載せるのではなく、ボツにしてゆく作業なのだ。
文章だって、そうである。
どんどん削ってゆく。
そのほうが、むしろ、イメージが広がってゆく場合が多い。
日本では、その究極の姿として、世界に例を見ない
わずか五、七、五による十七文字の文学が存在する。
編集するとは、ひとつの正解にむかってまとめてゆくことではなく、
ひとつの可能性にむかって何かを切り捨ててゆくことではないかと
最近、身に染みるようになった。
紙の本には、制限がある。
印刷して、製本するには、物理的な容量が限られる。
だからこそ、編集者は、無限の可能性のなかから、
川底できらきらと光る、数十年の歳月を水に押し流され、
削られ、見事な形に磨き上げられた石のような形を求める。
デジタルメディアには大きな可能性があるが、物理的な制限が
紙よりも少ないため、あれもこれも、という発想になる。
だが、人はそんなに多くのものを受け入れる能力はない。
そのあたりの塩梅が、これから必要になってくるのではないかと思う。
まあ、小理屈はともかく、ブログという場を活かして、
未収録作品を紹介できるのも、ネット時代のすぐれた機能だといえる。
じつは、恥ずかしながら、この『メルカトル・パノラマ』の編集中、
ひとつの作品の最小構成単位である画像を、これほどきちんと眺めていなかった
ことに気づいた。
この一枚一枚のディテイルと全体のパースペクティブの綾こそ、
この作品の面白さだと、いまさらながらに気づいた次第である。
以下でご紹介するのは、座間味の風景である。






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『メルカトル・パノラマ デジタルフォトによるコラージュアートの世界』
仲本 賢 著
GAIART-COLLECTION 05
(『栄町-ポラントリュイ肖像写真集』につづく、シリーズ第5弾)
サイズ=タテ32×ヨコ24センチ
本文:108頁=4色刷り(96頁)+モノクロ(8頁) ハードカバー
定価 3,990円(税込)
発行 ガイア・オペレーションズ
発売 英治出版
posted by サンシロウ at 00:40|
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■仲本賢作品集