
和田剛さんの写真展(宮古編)の最終日。私は那覇へ移動するので、一足先にギャラリーを出て、間那津〜池間〜島尻と、ひとりでドライブに出かけた。
宮古に来て、東平安名崎と来間島、池間島に行かないと、どうも宮古へ行った気にならないからだ。
その日、天気は上々だった。池間大橋にさしかかり、大神島にご挨拶しようと思って展望スペースへ言ったら、驚いた。
大潮の干潮のせいか、いつもは海である場所に、小さな無人島ができているではないか。
あんなところに、砂浜があるなんて。
初めてみる光景だった。
ふと、久米島の「はての浜」を思い浮かべた。
いつもは、黒いウェットスーツを着た地元の漁師が
潜ってタコ漁をしている場所である。
海底は、あんな白砂だったんだ・・・。
お前は、写真集など出して、宮古を知った気になっているようだが、まだまだ知らないことはいっぱいあるぞ、と島に説教されたような気がした。
ありがたいことである。
あまりにほのぼのとした景色に見とれてしまい、結局、池間島へ行く時間がなくなり、池間大橋を渡らずに、島尻へ。

拙著「孤島の発見」を編集していたとき、島尻というエリアの風景を集めた。ところが、どうにも納得できなくて、島尻エリアを外した。
今日がどんな具合だか、見たかったのである。
大潮の日で、さらに、干潮の時間だったのだろう。
島尻のマングローブが、このうえない状況で輝いていた。
もはや写真集は出てしまったけれど、「だからさー、最低でも、1年、いつづけないと、だめなんさー」などと、ぶつぶつ独り言を言いながら、シャッターを押しつづける。
でも、それでいいのだ。その風景を見ること自体に、僕は揺るぎない幸福を感じるのだから。
同じ風景は、二度とありえない。
だからこそ、その時、しっかりと見つめなければならない。
(和田文夫)